タイトル未定53 R18

珍しく53です。しかも8←3←5なのでご注意ください。
パロで大学生設定の、3&8は医学部。5は教育学部。と思っています。
夢で見たシチュエーションがどうしても35にできなくて、唇を噛みながら書きました…。

その日、三蔵は最悪の1日だった。
朝からコーヒーの粉を床にぶちまけ、大学までの通学で乗る予定の電車を目の前で逃した。

幸い講義には間に合ったが、息を切らして入ってきたところを想い人に見られて最悪な気分になった。さらに、授業中に使っている眼鏡を忘れて黒板と教授を睨みつけるように見ていたため、眉間のあたりが大変疲れた。教授の顔もこちらを見る度引き攣っていたような気がするが、良く見えなかったので気のせいだと思いたい。

そのまま午後の授業までずっとそんな調子で、大学が終わったら家に引きこもってやろうかと思ったが、このイライラを何かで発散したくて飲み屋街にフラッと立ち寄ってしまった。

どこへ入ろうかと迷っている内に、街中のディープな場所へ迷い込んだらしい。

初めて見る店ばかりで余計に迷ったが、一番落ち着いていそうなバーへ足を向けた。

カランとドアが鳴り、マスターらしき人がチラリとこちらに視線を投げる。値踏みするような視線が不快で帰ろうかと一瞬思ったが、絶妙なタイミングで「いらっしゃい」と言われて帰りにくくなった。

周りの客数人にもチラチラ見られるような視線を感じるが、全部無視してカウンターに座った。元から目立つ容姿のせいで、視線を集めてしまうことには慣れていた。


「ダイキリをひとつ」

「かしこまりました」


適当に甘目のカクテルを頼む。今は無性に甘いものが欲しかった。


「オニーサン、ひとり?」


イライラしながらカクテルを飲んでいると、派手な紅色が視界に入った。

三蔵は当然のように無視をする。


「ねぇ、ここがどんな場所か知ってんの?」

「うるせぇ、絡むな」

「ひどーい。ねぇねぇ、オニーサンってどっち?」

「何の話だ」

「だから、タチ? ネコ? ネコだったら嬉しいな」

「……」


言われて周りを見てみると、男ばかりがペアで酒を飲んでいるようだった。

女っぽい雰囲気のやつはいるが、本当の女はいないようだ。そこでようやく気づく。


「そういうことか。帰る」


支払いを済ませてさっさと帰ろうとすると、派手な男が腕を掴んできた。


「殴られてぇのか?」

「いやいや、ちょっとくらい話聞いてよオニーサン。もう手は出さないからさ、フツーに一緒に飲まない?」

「なんでてめぇなんかと……」

「んー、間違ってたらごめんだけど、オニーサンなんか吐き出したいこと、あるんじゃない? 俺でよければ話聞くよ? 関係ない人の方が言いやすいことってあるじゃん」

「……」


確かに今日1日、碌なことがなかった。帰ってもイライラは消えそうにないし、ちょっとくらい、知らないやつに吐き出してもどうということはないかと、男の言葉に納得した自分もいた。


「てめぇの奢りなら考えてやる」

「まじで? やった。いいよいいよ、それで」


周りの視線を集めてしまったが、ここではよくあることなのだろうか。もう誰もこちらを見てはいなかった。


「甘いのが好き? マスター、グラスホッパーをオニーサンに。俺は…とりあえずビールで」

「っふん」


再びカウンターに座り直し、男の頼んだ酒を飲む。奢ってくれるのならばと注文は任せた。そのせいで、アルコール度数の高めな酒ばかり飲まされていることに気づかなかった。

3杯ほど男の頼んだ酒を飲んだところで、口が軽くなり始めた。


「今日は朝から、ムカつくことばっかり起きやがって……」

「うんうん」


5杯も飲めば、目元が赤くなってきて、自分でもちょっとまずいなと思う。だが、話始めるともう止められなかった。


「それで、俺は……」

「あ、そうだ、俺は悟浄って言うんだけどオニーサンは?」

「あ?……三蔵」

「三蔵ね、年も近いっぽいし、呼び捨てでもいい?」

「好きにしろ」

「俺のことも悟浄って呼んで」

「……ごじょう」


もう何杯飲んだか覚えていない。隣で悟浄はビールやらハイボールやらをチビチビと飲んでいた。ムカつくなとは思ったが、何も言えなかった。だんだん、眠気が襲ってくる。


「ちょっと三蔵、寝ないでよ~。家、帰れる?場所どこ?」

「家……? ここから3つ先の駅の……」

「もー、それだけじゃわかんないってば」


そんなことをぐだぐた言い合っていると、カランと鳴るドアから入ってきた男が悟浄を見つけて声をかけた。


「あれ、悟浄じゃん。まーたやってんの?」

「ちょ、今良い所だから黙ってろよ」

「わりぃわりぃ、また飲もうぜ。話聞かせろよ」

「ぜってぇ嫌だ。あっち行ってろ」

「へいへい、気を付けれ~」

「わぁってんよ」


寝落ちてしまいそうな三蔵の横で、悟浄が誰かと話している。またってなんだ?何に気を付けるんだ?もう何も考えたくない。寝たい。


「なぁ、俺のうちに来ない? ここから近いから」

「いやだ……」

「でもここで寝るの?」

「いやだ……」

「じゃあどうすんの」

「うるせぇ」

「こんなになっちゃったの、俺のせいだし、介抱くらいさせてよ」

「すきに、しろ……」


そのまま限界で目を閉じた三蔵は、呆れながらもニヤついた顔を隠せない悟浄に気づけなかった。

ゆらゆらと、心地よい揺れ。

誰かに運ばれているようだ。

ゆっくりとベッドに下ろされ、横になる。冷たいシーツが気持ち良かった。

そっと頭を撫でられ、ぼーっとする頭で思わず口をついてしまった。


「はっかい……」

「はっかい?」


聞き返され、一気に現実へと意識を覚醒させる。

目の前にいるのは派手な紅色の髪をした男。悟浄、と言っていたのは辛うじて覚えている。

口をはくはくと動かし、驚きの表情をしていた三蔵は、一気に顔を赤くして目を潤ませた。


「頼む。誰にも言わないでくれ」

「何を?」

「今の、ことを……」

「まんまと泥酔させられてお持ち帰りされたこと? それとも、男の名前を呼んだこと?」

「……」

「はっかい、さんのこと?」

「どうすればいい」

「ん?」

「お前を口止めするために、俺は、どうすればいい」

「ん~、まぁいっか。俺、三蔵の顔すっごい好みなんだよね。抱かせてくんない?」

「そうすれば、死ぬまで今のことは言わないでいてくれるのか」

「いいよ、約束する」

「……ひとつ、条件を出してもいいか」

「えー、お願いできる立場じゃないってわかってる?」

「うるせぇ、聞け」

「内容によるけど」

「俺の、言う通りに抱け」

「……と、言うと?」

「てめぇが、八戒を演じろ。八戒にならいいと、思っていた。タチとかネコとか、どっちがいいかまではわからなかったが」

「ん~、まぁ、それで三蔵がイイっていうなら、そういうプレイだと思えばいっか」

「俺を抱きたいというなら条件を飲め。嫌だというなら俺がてめぇを掘ってやる」

「わかったわかった、それでいいから抱かれるのだけは勘弁」


そういうと、悟浄は風呂とトイレを勧めてきた。やり方がわからないならやってあげようかと言われたが、それだけは断固拒否した。風呂に行く前に条件を伝える。


「敬語を使え。優しくするな。俺の目を隠せ。今日はとりあえずそれだけでいい」

「はっかいさんって、酷い人なの?」

「てめぇみたいなヤツと一緒にするんじゃねぇ!」


その辺に落ちていた煙草の空き箱を悟浄に投げつけてやった。

それから俺はこんなところで何をやっているんだと思いながら、羞恥に耐えて準備をした。

やっぱり今日は、最悪の1日だった。

大人しく家に帰って引き籠っておくべきだった。


「じゃ、ご希望通り優しくはしないですけど、いいですか?」


タオルを目に巻き付け、後ろできゅっと縛られた。自分で希望したことだが、何も見えないというのは割と不安になる。


「途中で殴られたくないので、手も縛っちゃいますね」


カチャリと音がして、手を固いもので縛られた。これは、手錠だろうか。


「てめぇ、こんなもの……」

「勘違いしないで欲しいんですけど、それ、ハロウィンのときにダチが持ってきたものなんで。ウチで飲んでそのまま置いてったんですよね」

「ッチ」

「優しくしないでとは言っても、俺も怪我させたいわけじゃないので。最初は優しくさせてもらいますよ」


本物とは違う一人称に頭が混乱しそうになる。八戒なら「僕」と言うはずだ。声も、触れてくる手の感触も、時折肌をくすぐる長い髪も、何もかもが違う。

偽物だと、わかっているのに。

暗闇の先に見える顔は、優しく微笑む八戒の姿だった。


「あっ、ん」


目隠しの上からキスをされ、顔、首、胸へと唇が順に降りてくる。酒でまだ火照っている体に、唇の感触がくすぐったい。胸を執拗にキスしてくるが、なかなか乳首まで触ってこない。近づいたり、遠のいたり。だんだんもどかしくて、胸を軽く前へ突き出してしまった。


「三蔵は、触ってほしいんですか?」

「あっ」


口調を真似ているだけなのに。それだけなのに。

一気に体が熱を帯びる。元々火照っていた体は、まるで湯気が出そうなほど熱い。


「ふふ、可愛い」


そう言って、悟浄はパクリと三蔵の乳首を咥えた。


「ああっ!」


ビリビリと痺れる感覚。咥えていない方の乳首は指でコリコリとこねられ、どちらも耐えがたい。くすぐったさの奥にある快感に、体が震えた。

だんだん、こねていた指はきゅうっと痛いほど摘む動きに変わり、舌で舐られていた方は時折カリっと歯を立てられる。

痛みを感じてようやく、これはただの身代わりによる行為なのだと思い知ることができる。なんだか情けなくなってきて、涙が出てきた。だが、目隠しをしているタオルのおかげで涙は見られない。


「気持ちいですか?」


頷くことも、顔を振ることもできなかった。ただ、耐えるように唇を噛む。


「三蔵は綺麗、ですね」


色白の肌の中で乳首だけがひときわ赤い。思わず素で話しかけそうになったのを堪え、悟浄は三蔵に見とれた。

三蔵は肩で息をしながら、次に何をされるのかと不安げにしている。それを見てつい口元がにやけてしまった。綺麗な顔で、偉そうな態度で、なのに、今はただ裸を晒して不安げにしている三蔵。好みの男を組み敷いている事実に久々に悟浄も昂るのを感じ、舌なめずりをした。


「初めてにしては、才能がありますね」


つつーっと首から足の付け根までを指でなぞると、びくびくと三蔵が跳ねた。下を見下ろすと、ピンと立ち上がったペニスが見える。


「それとも、はっかいさんにされてると思えるからですか?」


わざと、意地の悪いことを聞いた。三蔵がブルブルと震えて顔を逸らす。悟浄にはそれがたまらなかった。


「きもちいいこと、いっぱいしましょうね」


そして、震えるペニスを頬張った。普段なら、悟浄は相手にフェラをすることはない。タチなこともあって、自分と同じものを咥えるなんてと思っていた。だが、あまり使っていなさそうな三蔵のそれがふるふると震えているのを見ると、咥えてやりたいと思ってしまった。


「く、ぅ」


始めは優しく。だんだん激しく。手に付けたおもちゃの手錠がカチャカチャと音を鳴らしている。抵抗しようとする手を押し退け、乳首もキュッと抓ってやった。


「ああぁっ!!」


三蔵はあっけなく果て、顔を真っ赤にしている。目隠しをしているタオルは目の辺りが少し濡れていた。生理的な涙かもしれないが、もしかしたら泣いているのかもしれないと思った。

少しぐったりした様子の三蔵を横向きにし、ベッドの下に手を伸ばしてローションのボトルを手に取る。カポっと蓋の開く音に、三蔵がビクリと反応した。


「怖い…ですか?」

「……怖くはねぇ」

「そう、ですか」


つい、頭をなでて頬にキスをする。あやすようにキスをしながら、ローションを後ろに塗りこんだ。ゆっくりと指をいれ、慣らすようにぐるぐるとかき混ぜる。


「ふ、ぅ」


三蔵は泣いているのか喘いでいるのかわからないような声を出して耐えていた。

自分で準備はしたが、うまくできているのかわからない。もしかしたら、悟浄の手を汚してしまっているかもしれない。だが、優しくするなといったのに優しく触れてくる手が気持ちいい。苦しい。まるで本当の八戒のようで、悲しくなる。


「はや、く、しろ」

「さっきも言いましたけど、怪我させたくはないので」

「優しく、するな、ぁ」


そういうと、小さなため息と共に指が増えた。とぷりとローションも足され、一瞬冷たくなったと思ったらすぐに擦られて熱くなる。だんだん激しくなる指の動きに、酔った頭は考えがまとまらなくなってきた。羞恥と、苦しさと、少しの快感。喋り方だけ真似た想い人の偽物。何が本当なのか、わからない。


「気持ちいいことだけ、考えていてくださいね」


そう言われ、快感だけを探すようにする。すると、だんだん苦しさも薄れてきてマシになってきた。気づけば、指が増えている気がしたが今何本入っているかはわからなかった。


「そろそろ入れますね」


指が抜かれ、喪失感にぎゅっと体に力が入った。


「足、開いてください」


横になっていた体を上向きにされ、足を開く。悟浄のペニスがピタリと当たった。そして、ゆっくりと押し入ってくる。少し入っては少し引き、さらに少し先へと進んではまた少し戻る。抜き差ししながら徐々に奥を開かれて、行き止まりと思われるところまで入ったところでぶるりと体が震えた。


「本当に、優しくしなくていいの」

「けいご、つかえって」

「ああ、悪い。もう余裕なくって。優しくしなくていいんですねッ」


そこからは、三蔵はもう何も考えられなかった。気持ちいいことと、苦しいことだけが体を埋め尽くす。内臓を突かれて一瞬酒が口から出てきそうになったが、ぐっと堪えた。悟浄がたっぷりと使ったローションのおかげで痛みはなく、擦れて熱くなったところから快感が生まれている感じがした。


「あっ、あっんぅ」

「三蔵、キス、していい、ですか?」

「あ、きす、きす、してっ」


三蔵から手を伸ばし、悟浄の長い髪を引っ張ってむちゃくちゃなキスをした。瞼の裏に写る八戒の髪は長くないのに、体は悟浄の髪を引っ張って引き寄せている。もう誰とキスしていると思っているのか、自分でもよくわからなかった。

腰を掴まれ、間に枕を挟まれ腰を上げる姿勢になる。悟浄はさらに激しく挿入を繰り返し、三蔵がもうダメだと思ったところでようやく果てた。

ズルっと引き抜かれる感覚にようやく体から力を抜き、


「もう、寝…る……」


それだけ言って、三蔵は意識を手放した。

悟浄はゴムを縛ってポイっとゴミ箱に放り投げると、三蔵の横に倒れこんだ。

三蔵の顔を見ようとして、縛ったままだったことに気付き、目と手を縛っていたタオルと手錠を外す。少しだけ赤くなった目元と手首。ほとんど日に当たっていないような白い肌に痕を付けたのが自分かと思うと、悟浄はまた昂ってしまいそうなのを抑えた。


「はっかい、って、聞いたことあるんだよなぁ~」


そういえば、と思い、悪いとは思ったが三蔵の荷物から財布を取り出し、学生証を探り当てた。バーでの話から大学生だと思っていたが、当たりだったようだ。

このあたりの大学生、という時点でもしやと思っていたが、


「桃源大学の玄奘三蔵、医学部。あったま良い〜。頭良いのに、なぁ」


やっていることはすこぶる頭が悪い。

想い人の代わりなど、どこにも居るはずがないだろうに。

そして、医学部と見て自分の予想が当たってしまったことを確信する。


「八戒、ね」


学生証と財布を元に戻し、悟浄は三蔵に布団をかけてからシャワーへ向かうのだった。


【その後の妄想】

・5と8は高校の同級生(花喃も)

・8から友人として三蔵の話は聞いていたが、ここで三蔵と結びつく

・勝手にLINE交換しておく。スマホのロックは学生番号で開いた

・それから度々会うようになり、いろんなシチュエーションを頼まれる

・なんやかんやあって正当にお付き合いしてくれ

・35じゃないことが不満になってきたので続きを書くことはたぶんない

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