三浄以外

潜入美人とエロ河童

〜さんの素敵な落書きから勝手に書いてます。53です。

許可を得たので、元ツイートのリンク貼ります!!

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「……あー疲れた。最近、働きすぎじゃねぇか?」

 悟浄は、またしてもシマを荒らす不届き者どもの掃除に駆り出されていた。いくら片付けても、まるで底なしの沼のように次から次へとネズミが湧いて出てくる。いい加減、うんざりだった。

「美人なオネーチャンにでも癒されてぇ〜……」

 ぼやきながらポケットから財布を取り出したその瞬間、嫌な予感がする。

「……あー、そういや……こないだ悟空にせびられて、飯奢ったっけ」

 その後、お小遣いを補充した記憶はない。そして、案の定。

「……スッカラカンかよ、ったく。よりによって、こんな日に」

 ため息まじりに財布をしまったとき、頭の上の二本の触覚がひょこっと揺れた。八戒のところに戻るしかないかと顔を上げると、目に飛び込んできたのは馴染みの賭博場の看板。

「お、ちょうどいいとこにあるじゃん」

 しばらく足が遠のいていた遊び場。今日は運が向いてる気がする。

「ついでに、美人のひとりでも転がってりゃ最高なんだけどな」

 ポケットに手を突っ込んで、浮き足立つように扉へと向かった。

 ーーーーチリン。

 扉を開けた途端、音と熱気がぶわっと押し寄せた。中はすでに上がったテンションでごった返している。歓声、怒号、グラスのぶつかる音、札の擦れる音——金の匂いが濃厚に漂っていた。

 賑わってるってことは、稼ぎどきってことだ。

「さぁて、どこで遊びますかね」

 店内をふらふらと歩いていた悟浄の目が、ふと一点で止まった。視界の隅でキラリと何かが光ったのだ。

 反射的にそちらに目を向ける。視線をあげれば、金髪でチャイナ服を着た美人の後ろ姿だった。

 金髪美人は他の客からも視線を浴びており、相当な美人だと想像できた。だが、

(三蔵みてぇな髪色だな〜)

 そう思ってなんとなく眺めていると、ふいに金髪美人が悟浄の方へと振り向いた。

「「!!!」」

 金髪美人は悟浄の方へカツカツと歩いてくると、その腕を掴んで店の外へと向かって歩いていく。

「え、ちょ、さん」

「呼ぶんじゃねえ」

 ジロリと睨まれ、悟浄はぐっと言葉に詰まる。

 そのまま店の外まで連れ出され、店の横の狭い路地裏に押し込まれた。

「あの〜、もう聞いてもいい?」

「内容によっては殺す」

「三蔵、だよな?」

「……素直にそうとは言いたくねぇが、そうだ」

 三蔵は苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。

 改めて頭のてっぺんからつま先まで眺めるが、喋らなければどこからどう見てもこの街一番の美人である。

「え、何やってんの? そーゆー趣味あったんなら早く教えてよ。俺もそのプレイ興味あ」

「死ね」

「っだぁ! 危ねぇって! こんなとこで撃つな!」

 悟浄が最後まで言う前に、銃弾が飛んできた。

 三蔵は心底嫌そうな顔をしながら答える。

「潜入捜査中だ。邪魔すんな」

「うっそ、俺聞いてねぇけど!」

「面倒臭ぇから八戒が口止めしたんだろ」

「マジかよ……」

 勝てる気はしないが、後で八戒に抗議しておこうと悟浄は思った。ついでに、賞賛も。

「それ、八戒が準備したの?」

「実際にやったのは違うが、手配したのはアイツだ」

「ねぇ、なんか詰めてる?」

「触んなズレる」

 見ただけでは偽物と分からない胸をツンツンつついてみると、確かに本物よりは少し固くて弾力がある感じがした。

 男らしさを感じる部分は服や装飾で上手く誤魔化しており、三蔵によればお尻にも何か詰め物をしているらしい。蒸れるし歩きづらいと文句を言っていた。

「あとは極力脱力してろと言われている。筋肉に力を入れるな。だと」

「うっわ、俺絶対無理だわ。よく引き受けたな」

「好きでやってるわけねぇだろ」

「ねぇねぇ」

「なんだ」

「パンツ見せて?」

「アホかこのエロ河童」

「えーだって八戒ならそこまで用意してるって〜」

「なら直接八戒に聞け」

「ちょっとだけでいいから、お願い」

「…………オヤジくせぇぞお前」

 もう付き合ってられん。と言って三蔵は賭博場へ戻って行こうとする。悟浄は慌てて引き止め、首筋に強く吸い付いた後耳元で呟いた。

「仕事終わったら、いつものとこで待ってるぜ」

「〜〜ッ、エロ河童が!」

 顔を赤くした三蔵を見送りながら、悟浄は三蔵に熱い視線を送っていた男たちを絶対に忘れないなと思う。どこかで会うことがあればきっちりお礼をしなければならない。

「あ、ホテル代もないんだった」

 そうして悟浄は、結局八戒の元へと向かうのだった。