単話など
確信犯は風呂の中
Xで勝手に『#1日1三浄』をやっていて思いついたネタをSSにしたので、こちらにも投稿しておきました。
大学生35のつもりです。
予報では晴れだったはずなのに、日が傾くにつれて雲行きが怪しくなり、遂には雨がポツポツと降り出してしまった。
電車の窓を水滴が競争するように滑っていく。それを見ながら、もう走って帰るしかないかと三蔵はため息をついた。
駅から歩いて10分程の距離。
三蔵は鞄が濡れないように前に抱えて走った。大事なゼミの資料が入っているので、濡らすわけにはいかない。
ようやく建物の屋根の下まで辿り着き、ひと息つく。部屋はアパートの2階。階段をのぼりながら適当に雫を払ってみるものの、襟元から背中に流れた雨のせいで服が張り付いてしまい不快だった。
イライラしながら鍵を開ける。すると、
「おかえりー。やっぱ濡れて帰ると思ったわ。風呂入ってんぞ」
「傘持ってこいよ」
「いや、俺もさっき帰ったばっかだし。ちょっと降られたけど、ギリギリセーフ」
悟浄が出迎えてくれ、少し溜飲が下がる。同棲を始めて半年が経つが、一人でいる時よりもイライラする事は減ったように思う。
靴と一緒に濡れてしまった靴下を脱ぎ捨て、冷蔵庫から麦茶を出していた悟浄を引き寄せた。
「うわっ、ちょ、あぶねーって」
慌てて麦茶を元に戻し、長い足で冷蔵庫を閉めている。それを確認してから思い切り抱き締めた。
「もー。俺も濡れるじゃん」
「一緒に入ればいいだろ」
「三蔵、確信犯だろ」
「煩ぇ」
じゃれあいながら服を脱ぎ、脱いだ服は適当に洗濯機に突っ込んだ。体を洗うのもそこそこに、冷えた体を二人分、決して広くはない浴槽に押し込む。
「なー、やっぱ狭くない?」
「別に」
「……アンタは快適そうでなにより」
三蔵は悟浄に凭れるようにしてお湯に浸かっていた。悟浄の肩を枕にし、膝を腕置きにして目を閉じている。
ふいに、三蔵が悟浄の足を指でなぞり初めた。
「ちょっと、擽ってぇよ」
だが、三蔵は凭れていた頭を起こし、悟浄の足の先まで指を滑らせる。
「擽ったいってば」
抗議の声は無視して、今度は指と指の間をひとつずつ撫で始めた。
堪らなくなって足を引っ込めようとするが、浴槽にはもうスペースがない。
「さんぞ、やめろって」
すると、三蔵がぐっと体を押し付けてきた。三蔵が座っているせいで開かれた足は、何も隠すことなど出来なくて。
「勃ってんじゃねえか」
「これ、はッ」
背中で緩く圧迫され、体をゆらされる度に擦れて感じてしまう。三蔵の指もいつの間にか膝まで戻り、そのままお湯の中へ潜っていく。
「ズルいってッ」
「何がだ?」
「三蔵がそこにいるから、」
「そうだな、確信犯ってやつだ」
「最初からそのつもりかよ!」
三蔵は狭い浴槽の中で身を捻り、悟浄の片足を担ぎ上げた。急に下半身を持ち上げられて溺れるかと思い悲鳴を上げそうになったが、三蔵が体を押し込んで悟浄を支えた。というか、三蔵が膝立ちになると、悟浄が溺れるほどのスペースはもうない。
「あっためて、くれるだろ?」
「何言って、アッ」
いつの間に用意しておいたのか、ローションのボトルを開けて指を突っ込んできた。
「滑るから、アッあぶ、ね」
「そんなに使わねーよ」
的確に弱い所を責められ、ひたすら丁寧に解される。風呂で温まった体はあっという間に開かれてしまう。そして、いつもより熱い気がする三蔵が押し入って来た。うねる体内は熱く、時折混じる風呂のお湯の方がぬるいくらいだった。
「やっ、あっ、さんぞっ」
「悟浄、悟浄」
抱えた足が胸に着く程折り曲げ、苦しい体制の中で夢中で唇を合わせる。バシャバシャとお湯の跳ねる音が、肌のぶつかる音をかき消すようだった。
「も、イくっ」
「イって、いいぞ」
「あああっ!」
悟浄がのぞけり、腹の上を白濁で汚す。
三蔵も寸前で抜いて、その上から悟浄の腹を更に汚した。
「言っても、いい?」
「なんだ」
悟浄はシャワーで体を流しながら、浴槽の縁で頑張っていた首や、狭い中で体を支えていた腕をさすっている。
「ここなら掃除は楽だけど、首とか腕とか、変なとこ痛くなるからやっぱベッドがいい」
三蔵は栓を抜いてお湯が減っていく浴槽に座ったまま、確かにな、と頷く。
「なら、行くか」
「あれ? まだ足んない?」
「そういうてめーはどうなんだ」
「まー吝かではない。みたいな」
「曖昧なこと言ってんじゃねえよ。さっさと上がるぞ」
「上がる前にアンタは浴槽洗えよ?!」
「チッ」
まあたまには雨に濡れるのも悪くないもんだな。と、三蔵は思うのだった。